転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


467 ちっちゃな事でお料理の味は変わっちゃうんだって



 メレンゲクッキー、早くできないかなぁって思いながらオーブンを見てたらね、お爺さん司祭様がこんなこと言ってきたんだ。

「ところでルディーン君。魔道コンロの試運転にはケーキとやらを作るのではなかったのか?」

「あっ!」

 僕がケーキを作ろうって思ったのはさ、このお家に入った魔道コンロの試運転ってのをやるためだったんだよね。

 でもさ、スフレオムレツでコンロは使っちゃったし、オーブンの方も今メレンゲクッキーを焼いてるよね?

 って事はもう試運転、終わっちゃったって事だもん。

「僕、みんなにケーキを食べてもらおうって思ってたのに……」

 ならもう試運転は終わってるからケーキは作んなくてもいいんだよねって思った僕は、しょんぼりしちゃったんだ。

 でもね、それを見たノートンさんは大慌て。

 ホントだったらそのままケーキを作るはずだったのに、メレンゲを何に使うの? って聞いたもんだからスフレオムレツとかを作ったんだもん。

 そのせいで僕がしょんぼりしちゃったもんだから、何とかじなきゃって思ったみたいなんだよね。

「えっと……もうみんな、そのケーキってお菓子が気になっているんだ。いまさら作るのをやめるなんて事になったら、がっかりするんじゃないかな?」

「そうですよ! スポンジケーキの作り方も知りたいなのですし、そのケーキってのがどんなものなのかも料理人の一人としてとても知りたいのですよ」

 ケーキはまだどんなお菓子なのか、ここにいる人たちは誰も知らないでしょ?

 だからノートンさんとカテリナさんは、それを教えてって言うんだ。

「ラファエルよ。そなたがおかしな事を言うから、変な話になってしまったではないか」

 それにね、ロルフさんもお爺さん司祭様をこう言って叱った後、大丈夫だよって。

「ルディーン君。見ての通り、ここには3台の魔道コンロが入っておるじゃろう? 今はまだそのうちの1台の試運転が終わっただけではないか。本来はお菓子作りに3台も使わぬからと後程他の者に試運転をさせるつもりじゃったが、ルディーン君がそのケーキとやらを作るのに使ってくれればその者たちも助かるというものじゃよ」

「そうなの?」

「うむ。ヴァルトの言う通りだ。料理人たちも、調理器具の整理などで忙しいであろうからな。ルディーン君が試運転をもう1台終わらせてくれたと聞けば、きっと感謝する事であろう」

「それにクラークも、ここにきてスポンジケーキの作り方を教えてもらえないなんて事になれば悲しいじゃろう?」

「はい、その通りです旦那様」

 この調理場はとってもおっきいから、ここで使う道具もいっぱいあるんだって。

 だから料理人さんたちは自分たちの使いやすいようにその道具を整理しなきゃダメだから、魔道コンロをもう一台使った方がみんな喜ぶんだよってロルフさんとお爺さん司祭様は言うんだよね。

 それにね、ノートンさんたちもせっかくならケーキを作ってみたいって言うんだよ。

「そっか! じゃあ、ケーキを作ってもいいんだね」

「うむ、当然じゃよ」

 そんな訳で、僕たちはやっぱりケーキを作ろうねって事になったんだ。


 今度こそ、本当に今度こそケーキ作り開始。

「それじゃあ、まずはスポンジケーキを作るんだね?」

「うん! 先に作っておいとかないと、生クリームが塗れないもん」

 最初は土台になるスポンジケーキからだ。

「ノートンさんは、卵の白身をさっきオムレツを作った時とおんなじくらいになるまでかき混ぜて」

「おう、解った」

「カテリナさんはね、小麦粉をふるって。そうしとかないと、おいしく作れないからね」

「解ったのです」

 ノートンさんたちにメレンゲ作りと小麦粉をふるってもらってる間に、僕はお砂糖を出してそれにクラッシュの魔法をかける。

 これ、1回だとあんまり細かくならないから、2回かけないとダメなんだよ。

 でね、それを別にしといてもらった黄身をよくかき混ぜてから入れてったんだ。

 そしたらね、

「ルディーン君、出来上がったぞ」

「えっ、もう?」

 なんと僕がお砂糖を溶かし終わる前に、ノートンさんがメレンゲができたよって言ってきたんだよね。

「大変だ。オーブンを温めないと」

 生地が出来上がったら、すぐに焼いた方がいでしょ?

 だから僕、黄身を混ぜ終わったらオーブンの予熱を始めるつもりだったんだよね。

 なのにノートンさん、僕が魔道泡だて器でメレンゲを作るよりも早く作っちゃうんだもん。

 僕は大慌てで、魔道コンロのオーブンに火を入れてもらったんだ。

「あっ、ノートンさん。バターと牛乳取って」

「なんだ? 黄身に加えるのか?」

「そうだけど、先にバターを溶かさないとダメだから余熱のついでに溶かしちゃうんだよ」

 このバターと牛乳はノートンさんの言う通り黄身に混ぜるんだけど、バターはそのまんまだと混ざらないでしょ?

 だから予熱中のオーブンにちょっとの間だけ入れといて、溶かしたのを牛乳に入れてから黄身と混ぜるんだよね。

 こうしとけばバターをちょっと温めすぎても、黄身が固まっちゃう事が無いからね。


 そんな事をお話しながらお砂糖と牛乳入りの黄身を作ったら、今度はノートンさんの作ってくれたメレンゲと混ぜる作業。

「泡がつぶれちゃわないように、3回ぐらいに分けて入れながら木べらで混ぜてってね」

「こんな感じか?」

 ノートンさんは黄身と牛乳の混ざったのを、木べらでメレンゲを持ち上げるようにして混ぜてったんだよ。

 でね、そのふたつがよく混ざったら、今度は小麦粉の番。

「カテリナさん。振るった小麦粉頂戴」

「はい」

 僕はカテリナさんから貰った小麦粉を、何回かに分けてゆっくりと、でもあんまり混ぜすぎないように入れてったんだ。

「そんな混ぜ方するのにも、何か意味があるのかい?」

「うん。小麦粉はいっぱい混ぜるとねば〜ってするでしょ? でも、そしたらスポンジケーキが膨らまなくなっちゃうんだ。だからね、まだちょっと粉が残ってるかなぁ? ってくらいのとこで混ぜるのをやめないとダメなんだよ」

 このお話を聞いたノートンさんはね、ちょっと不思議そうなお顔でこう聞いてきたんだよね。

「えっと、まだ粉が残っていてもいいのかい?」

「うん。カテリナさんがサラサラになるまでしっかりと振るってくれてるもん。これだったら粉がちょっと残ってても、ほっといたらすぐに溶けちゃうから大丈夫なんだよ」

 アマンダさんはお菓子屋さんだから言わなくっても解ってくれたけど、ノートンさんはこんな作り方した事なかったらしくってちょっとびっくりしたみたい。

「う〜ん。これもある意味メレンゲ作りと同様の、秘伝のようなものに思えるんだが……こんなにあっさりと聞いても良かったのだろうか?」

「そうなのですか?」

「ああ。このような小さなコツが、それこそ料理の味を大きく左右するんだ。それだけに、他の家の料理人には秘匿する事が多いんだぞ」

 このやり方を知らなかったら小麦粉が無くなっちゃうまでしっかりと混ぜるから、出来上がった生地はこれよりもねばーってしたものになっちゃうでしょ?

 そしたら僕が言ってる通りあんまり膨らまないから、出来上がったものはきっと全然違うもんになっちゃうんじゃないかなぁってノートンさんは言うんだ。

「今話題のスポンジケーキは、例えそのレシピを手に入れたとしてもこの小さなコツを知らなければ同じものは多分作れないだろうな」

「こんな小さなことが、そんなに大事なのですね」

 カテリナさんはそのお話を聞いて、すっごく感心したお顔で僕が混ぜたまだ粉っぽい生地を見てたんだ。


「あっ、そうだ! ケーキを作るには入れもんがいるんだった」

 生地ができて思い出したんだけど、そう言えばこれを焼くための入れもんがいるんだっけ。

 でもそんなの、ここにある訳ないでしょ?

 だから僕、いつもみたいに腰のポシェットからちっちゃな鋼の玉を何個か取り出したんだ。

「ほんとは銅で作った方がいいんだけど、今は無いからしょうがないよね」

 その鋼の玉をいつものようようにクリエイト魔法を使って何個かのケーキ型を作ってく。

 でね、それをウォッシュの魔法で洗ってから、もういっぺんピュリファイの魔法できれいにしたんだ。

 だってこれ、お肉を焼く串とかと違って、石鹸とかで洗うのが大変そうだからね。

「後はこれにバターを塗ってっと」

 焼いた生地がくっつかないように型の中にバターをしっかり塗った後、木べらを使ってそ〜って生地を入れていく。

 でね、生地が入った型をちょっと持ち上げて、何度かとんとんって落としたら準備完成だ。

「えっと、ノートンさん。あの型を少し持ち上げて落とすのも……」

「ああ、さっきと同じ、味を左右する小さなコツって奴だろうな」

 なんかノートンさんたちがひそひそお話してるけど、それをほっといてオーブンの所へ。

「うん。ちゃんとあったまってるね。ノートンさん。これ、オーブンに入れて焼いて」

「おう、了解だ」

 これで後はほっとくだけで、スポンジケーキは出来上がるはず。

 って事で、その間に今度は生クリーム作りを始めたんだけど。

「あっという間にできちゃったね」

「まぁ、ただかき混ぜるだけだからな」

 ノートンさんがすごい速さでかき混ぜるもんだから、あっと言う間にホイップクリームになっちゃったんだよね。

「これだったら、スポンジケーキが焼けてから作ってもらった方がよかったかも?」

 僕がそのホイップクリームを見ながらそんなこと言ってたら、ロルフさんがとことこってこっちに近づいてきたんだよ。

 でね、僕の横からそのホイップクリームを覗き込んだ後、ノートンさんにこう聞いたんだ。

「クラーク。これの材料はまだあるのか?」

「はい。バターは作りたてが一番おいしいので、その材料は常に冷蔵庫に入っているので」

「ふむ。ならばこれを試食しても何の問題も無いのじゃな」

 どうやらロルフさん、できたばっかりの生クリームを見て、どんな味か気になったみたいなんだよね。

 だから後でまた作ればいいって聞いて、それを食べてみようっと思ったみたい。

 そしてそれは他のみんなもおんなじだったみたいで、

「それならば、わしも頂くとするかのぉ」

「そうですわね。どんな味がするのかしら?」

 そう言いながら、みんなしてせっかく作ったホイップクリームを全部食べちゃったんだ。



 流石に今回もケーキの完成まで行かないとは思いませんでした。

 困ったものです。

 ただ、試運転の話とか、小さな料理のコツの話はどうしても入れたかったんですよね。

 結果、いつもより1000文字ほど多いのに終わらなかったと(苦笑

 と言う訳で次回もケーキ作りは続きます。


468へ

衝動のページへ戻る